記録
【解らない、が解ること】
本作は他人の痛みを理解できないという前提の上に成り立っているので、問答無用で良い映画である。過度にエモーショナルに、感傷的になることはなく、あくまでその前提の基に構成されている。
本作で最も共感できるのは、歴史を単に文字(数字)という記号の羅列で知ることの残酷さである。知ることと理解することは全くの別物であることは当たり前だが、知っただけで理解したつもりになるのは非常に恐ろしい。本当の痛みを理解するには、まず行為から始めなければならないはずだ。知識は行為へと、行為は理解へと繋がっていると俺は思っている。その姿勢は一連のホロコースト関連の場面で顕著に現れており、ホロコーストを描く上で適切な態度だと感じた。
こういった作品がシネコンでかかるのが嬉しい、小品ながらも良い作品。俺も、他人の痛みは解らずとも痛みに敏感に、痛みに気付ける人間になりたい。
2025,21本目(劇場4本目) 2/25 TOHOシネマズなんば