人気俳優なら熟年に達し年相応になった姿も感慨深くてイイが、脂の乗っていた頃の姿もまた恋しくなるものだ。そんな贅沢な欲求を満たしてくれるような、自分にとっては正にジャスト・ミートのシャー・ルク・カーン堪能作品だった。
2人の“ヴィクラム”…。ラトールの惚けたような愛嬌のあるキャラクターと、アーサードの数奇な人生と通快な振る舞いが並走する魅力的な物語。ラクシュミー(プリヤーマニ)の活躍にも高揚。突っ込みたくなる部分も多々あるが其処も含めてエンタメ度の高い演出になっていた。
因縁深い武器商人カリとの闘いも実は警察をはじめとする腐敗した権力諸々を相手にしている構図。それを選んだ有権者の浅ましい動機をも問いただすクライマックスのメッセージが熱い。まぁちょっと欲張りすぎにも思えるけど。
挿入歌が登場人物ではなく演じる俳優を愛でる歌詞になっていて、まるで映画の外側から楽しむファン視点になっていたのが意外で新鮮に感じられた。
ちょっと気になったのが今作で鍵となっているシャー・ルク・カーンの容姿のVFX修正。昔の写真と見比べてみたがやはり、彼のトレードマークだったあの鉤鼻(鷲鼻)チックな鼻筋の修正がだいぶ強くなってきた印象。彼ほどのスーパースターも自分の容姿にはコンプレックスがあるのだろうか…ちょっと残念な気分になった。
字幕翻訳は藤井美佳氏。