結婚を申し込んだ翌日、突如として姿を消してしまった市子。
探せば探すほど、わかるのは彼女の行方では無く、彼女の過去のこと。
確かにそこに存在する、でも存在していない女性を探す物語。
市子という人生、それは決して彼女自身が望んだものでは無く、そして、彼女が望んだものの多くは他の人なら何の努力もなしに得られるものばかりだったが故に見ていて苦しくなった。
彼女の周りの人間が、彼女を大切にしようとすればするほど、それが彼女を苦しめてしまうというジレンマ、自分の人生を自分として生きることも、自分を辞めることもできないことも、独りで全部抱え込むしかなかったんだなと思う。
正しくは無い、でも責めることもできない。
市子はただ自分の人生が欲しかっただけなのだから。