HidekiIshimoto

市子のHidekiIshimotoのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.5
全員が熱演。というか花ちゃん以外は全員熱演感。花ちゃんは演とかじゃないそれそのもの感で、花ちゃんが泣き、虚脱し、悪魔化すると、生身の女がそうなってるのを目の前で見てる感。この存在の近さは共感ってことだろうけど、こんな過酷人生に同化しきって観客にも瞬時に否応なく共感させてくる恐るべき花ちゃん。演技というものについて考えさせられる。熱演は何かしらこちらから遠ざかってしまう感あると思う。この熱演とは別次元演技のせいで映画内存在の遠近感がおかしくなってる。良い方の現代邦画だとは思うけど、成瀬巳喜男とかの頃は演者全員が花ちゃん感なのでね、現代にゃもったいない感の花ちゃん。市子を追い詰めた"離婚後300日問題"、こんな法制度があるのは日本だけとかでこれまた自民の父権主義が出所臭い。その辺まで描ければ重いテーマも開かれて傑作になる気がするけど、描こうに描けずで陰鬱に閉じていくような、最近の良い方の邦画は残念ながらそんなのばかりの印象。