ERIN

市子のERINのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

恋人からプロポーズを受けた翌日に失踪してしまう市子。時系列と視点が交錯しながら少しずつ彼女の過酷な過去が浮かび上がる。

夏のじっとりした特有の空気感。汗ばんだシャツとけたたましいセミの声、開ききった瞳孔……あの場面の切り取り方、カメラの視点はならではだなと感じた。映しきらない表現が、ほかにも要所にあるのかもしれない。

幼少期の行動節々から家庭の事情を抱えていることを察する。生きていくために市子が人を殺めることをだんだん厭わなくなっていくのが複雑な気持ちになる。無戸籍であることという背景を知っても、おそらく自分が子の親だったら市子と関わらせたくない、と思ってしまう気がする。だからこそ、「守ってやる」「なんでわからへんねん」という男性陣の執着心が気色悪く感じる。途中から本当に人を絡めとるような魔性さ、性というか、、得体の知れなさを醸し出していく杉咲花さんがすごい。

ひとくちに面白かったとも言えない。不快な感情も引き起こされる。後味が残る。
が、こういう日本の一面が浮かび上がるような邦画を見れるのはいいなと思う。
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