パン

ミラーズ・クロッシングのパンのレビュー・感想・評価

ミラーズ・クロッシング(1990年製作の映画)
4.8
あ~!この凄くもやもやする感じ… 
コーエン兄弟の映画っていつもこの違和感で視聴者を病みつきにさせてくれるんだよな。 

本作は禁酒法時代のマフィア物映画。
コーエン兄弟の映画の中ではファーゴに雰囲気が近い気がする。
静かに、そして着実にドラマが進行していく感じ。

ボスのレオは真夜中に奇襲を受けても華麗にかわして1人で敵全滅させちゃうの凄いよね。ランボーみたい。
この手の映画のボスにしては強すぎる。

そしてボスの右腕的存在で本作の主人公とも言える男がトム。
彼はボスとは対称的に弱い。弱すぎる。
強そうな外見に反して目も当てられないくらい喧嘩が弱い。

彼は頭脳派という設定なのにそこまで賢いこと言わないしやらない。
ボスの女を寝取ったりとマフィアの癖にマフィアらしからぬ男。
まあそこが人間らしいとも言えるが。
レオとトムの関係は上司と部下というより昔馴染みの親友という感じ。

そんな2人の男とヒロインのヴァーナを交えた三角関係が熱い。 
完全に愛人ヴァーナを信用しきってのぼせ上がってるボスの目を覚ますためにトム自ら不倫を暴露するのって凄い選択だよね。
「あの女は昨晩俺と一緒だったぞ」ってさ… 
中々出来ることじゃない。
そして案の定怒ったレオからボコボコにされ追い出されるw

この選択は彼なりにボスや組織のことを心配した英雄的犠牲とも取れるし、自らの愛を優先したエゴイズムとも解釈できる。 
このあたりのバランス感覚が非常に上手い。

運命の分岐点とも言える夢で見た森の中で「あんた夢を見てるんだ!」というセリフが出てくるのはマジで鳥肌立った。

あとあのナイトクラブでの警察とレオ一味の銃撃戦もド迫力だね。
1人投降してきたのにまだ中で仲間がトミーガン構えて銃撃してくる演出痺れるわ。 
銃撃戦って本来見せ場なのに犯罪者側だけ闇に隠れて顔見えない構図にしてるのも一種のメタファー的表現というか、犯罪者側の闇の深さを表してるようにも見える。

この映画って俯瞰から見るとどこかコミカルなんだよな。
例えば子供が死体のかつら取ったのを大の大人たちが超真剣に推理してんのとか一々じわるw 

ラストシーン、トムがレオと決別したのは権力の庇護に依存してるダサくて情けない今までの自分からの卒業に思えた。
レオに尻尾振ってるほうが良い生活出来たのにそれを過去と一緒に捨てたわけだ。
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