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夢二 4Kデジタル完全修復版のaminのレビュー・感想・評価

夢二 4Kデジタル完全修復版(1991年製作の映画)
4.3
始まって1分で鈴木清順の映画だと分かる、鈴木清順以外でこんなことはやらない、というショットと繋ぎと向き合う。あとはどう抵抗しても無理なので、ひたすら受け身というか、鈴木清順を浴びるしかない。鈴木清順の映画とは、そういうものである。
個人的には初の『夢二』で、鑑賞後も、何故沢田研二主演でやろうと思ったのかが疑問ではある(別に観ていられないほど下手という訳でもないし、『太陽を盗んだ男』は素晴らしいので、沢田研二は悪くないのだけれど)。
まぁ、挙げ出したらキリがないショットと構図の素晴らしさ。凪いだ湖をボートが左から、奥から進んでくるところや、茶碗について語るシーン、階段から顔を出すところなど、全編に渡りシンメトリーをあえて外してる感じとか、もう何周もしてここまで「おかしく」したんだなぁというのが、観て取れる。
浪漫三部作と比較すると、他の2作ほどの広がりは確かに無い。しかしながら、他の2作よりも登場人物は多い。それでいて、描いていることが、誰かに対する執着(題材)と、どう生きて死ぬかということに尽きるので、実のところ他の2作よりも断然分かりやすい。浪漫三部作の入門には丁度いいと思う反面、やはり順番に観て洗礼を受けるべきとも思う。他の2作よりも、よりコメディチックなところもあるなぁと思った。沢田研二周りが室内のシーンが多く、その部分が小ぢんまりとしてしまった感はある。

とはいえ、構図、ショット、繋ぎ、カメラワーク、シーン、すべてやっぱり「なんだこれは…」の連続なので、鈴木清順の素晴らしさは健在である。
こんなの小説にしたら、読めない。ドラマでは続かない。写真では躍動しきれない。漫画だとうるさい。YouTubeでは説明しきれない。ラジオでは間に合わない。演劇的ではあるが、一度だけではあまりにももったいない。
鈴木清順の描いたものは、映画でしか成立しない芸術である。だから、何度も観たくなる。他には無い、分類の仕様のない感動がある。この何とも処理の出来ない圧倒的な印象と、心を揺さぶる何かが、映画が与える感動である。
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