オープニングで懐かしの「UNIVERSAL」が大写しになったので「ハア???」と思いながら見始めましたが、そういうことでしたか。まさか2020年代にこんな手触りの映画と出会うとは。懐かしのアメリカン・ニューシネマへのオマージュ作品でした。この味わい、イイですねえ。
時は1970年のクリスマス。舞台はアメリカ東海岸の全寮制名門私立高校。クリスマス休暇で人がいなくなった寄宿舎に取り残された三人が、時に対立しながらも次第に心を通わせていく様を淡々と描いた良作でした。過去のトラウマから人生を諦めた教師、クリスマス休暇に親から見放された高校生、ベトナム戦争で息子を亡くした賄い婦、、、それぞれに心の痛みを抱えた「負け犬」の登場人物たち。クリスマスの雪景色の中で繰り広げられるドラマ(というよりはスケッチ)は時に暖かく、時にさみしげに観客の心に寄り添います。最後に主人公が体制や権威に抵抗し、結局負けてしまうのもニューシネマの伝統。途中で何度かニルソンっぽいフォーク調の挿入歌が入るのもいいですね。あ、ちなみに二人がボストンの映画館で観てたのは「小さな巨人」。
「イージー・ライダー」「真夜中のカーボーイ」「スケアクロウ」「ファイブ・イージー・ピーセス」「明日に向かって撃て!」。。。自分はニューシネマの波より後の世代なのでこれらの名作群は主に名画座で観たのですが、また見返したくなっちゃったな。(雪のクリスマス休暇、アメリカ東海岸、すべてがクソに思える高校生、という状況設定的にはサリンジャーの「ライ麦畑」も思い出しますね。時代違うけど)
ps. 博物館のシーンで「Khruangbin - A Calf Born In Winter」が流れたのはうれしいサプライズ。(この曲、前から好きだったんで)