極稀に真っ当な映画観たくなるんだよ。真っ当てのはこの場合しっかりと人の心の機微や人生の悲哀、生きることのを虚しさと尊さを手堅い手法で描いたヒューマンドラマのこと。
なんて言うといかにも自分で情報を精査し選びに選んだようだけどまったくそんなことはない。Twitter(現X)で長年つるませてもらってる映画アカウントの方におすすめされたから。この方はこの手映画やハートフルコメディに精通してるからハズレがないんだよ。前に観た『アシュラ』が凄まじくハズレだったから失敗したくないという思いからのチョイスという側面もある。置きにいった選択。それもやもなしだよ。年の瀬までクソつまらねぇ腑抜けた映画観て怒り狂いたくないからな。怒り狂うネタは腐敗を極めた政権とそれに癒着する政財界、検察、そして奴らのために使い捨てされる側にいるくせに熱烈に現体制を支持する筋金入りの奴隷臣民どもが常時供給してくれるしな。
あと、書いてて思ったけどTwitterも他もそしてこのFilmarksも気づくとコメントのやり取りをしてくださる方は不思議とおれと違い、人や社会と正対したちゃんとした意義深い映画を好まれる人が多い。おれの方は自分の社会性の無さと視野の狭さを補ってもらって本当にありがたいと思ってるんだけど、そういう立派な人達におれのレビュー(例フロッグマン サイコマニア 尻怪獣アスラ)を読んでもらい一抹の申し訳なさもある。なので時々真っ当なやつもレビューしようという気持ちから本作は選んでたりもする。
と、久々に長々とした雑感を披露した後に本作に触れる。
一言で言うとディケンズのクリスマスキャロル系のヒューマンドラマだよね。善良だが偏屈さが災いして孤独な年老いた男や親愛な者を失い喪失感に苛まれる女性、複雑な家庭環境に馴染めず反抗的でニヒルになる少年。年代、性別、境遇も抱える悩みもまったく違う者達が隔絶された環境で過ごすことになり。軽蔑、反発しながら各々の人間的魅力に気づき理解が生まれ、愛おしい関係性を築く過程をハートフルにエモく描く。とってもウェルメイドな仕上がりで完成度が高い。てか、高すぎて逆に拘って具体的に言及することが野暮に感じる。
取り立てて派手なこと起こらないし話運びもオーソドックスでややもすれば予定調和で退屈になるグルーブだけどそれを回避するスパイスが絶妙な量とバランスとタイミングで効く構成になっているから地味だけど退屈しない。
なんだろうな、食べつけない美味しい何かをたべてすげぇ感動してるのに表現する語彙が浮かばなくて「お、美味い🥹」しか言えなくなる、そんな感じ。
主人公3人とも愛おしく魅力的だった。一番、心に響いたのは寮生のアンガス。母子家庭で母の彼氏が気に食わなくてやさぐれ自暴自棄になるところは自分も似た境遇だったのでその苦悶と怒りが痛いほど伝わった。
70年代が舞台だけど固定化された貧富の差、人種問題という今も解消されない問題をうまくフックしてるところとラストが思いの外苦く寂寞としてるところにただ“癒し”だけを提供する安い感動モノと一線を画してるのもよかった。このアメリカン・ニューシネマを感じさせる苦さを70年代を舞台に見せてくるから本作そのモノが70年代に作られた映画のように感じられて深い奥行きがある。苦さと儘ならさのマエストロ、アレクサンダー・ペインらしいと思った。と、言ってもそんなに観てないから誤解かも知れないが笑
あと、トリフォーの『アメリカの夜』にテイストが似てた。と、言っても『アメリカの夜』なんて殆ど忘れてるからあくまでおれの記憶の中の『アメリカの夜』なんでこれも誤解かもな😏
散漫なレビューだなぁ🙄