佐藤克巳

日本敗れずの佐藤克巳のレビュー・感想・評価

日本敗れず(1954年製作の映画)
4.5
敗戦から十年、新東宝製作、館岡謙之助脚本、阿部豊監督の、半藤一利「日本のいちばん長い日」発刊前に、昭和天皇ポツダム宣言受諾の聖断、宮城事件を映画化したポリティカル戦争映画の秀作だが、当時の状況から、仮名を使用しノンフィクションに至らない点は致し方無し。国体護持の確約が無いままなら本土決戦辞さずとする阿南惟幾陸相早川雪洲と、早期受諾、日本民族滅亡を回避し戦後復興に期待を賭ける東郷茂徳山村聰の対立は緊迫感十分。血気盛んな青年将校と宮内省侍従等との玉音盤争奪戦、阿南陸相自決も後年二作と遜色無し。特筆すべきは、民衆視点の東京大空襲の惨状、敗戦後の動向も丁寧に描かれていた。
佐藤克巳

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