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悪は存在しないのCのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

最初の30分 ブレッソンに憧れた大学生みたいな作品かよ最悪、と思ってた

住民に対する説明会のシーンから、あれ、これ凄いかもって一気に入り込んだ

最後にかけてまで、システム世界と生活世界の図式で説明することは簡単だから省くとして、形式的にもよく出来てると思ったし、軽さの中に引きつける重みがあった
ただこのままだと物語として物足りないと思ってたところに、ラスト 最悪だった

いろんな考察がありそうだけど、安易すぎる
あらゆるメタファーの図式で庇うことはできるんだろうけど、人をメタファーの世界に導くほど変性意識状態に持っていく深みはなかった上であれをやられても、興醒め

あのままヌメっと終わったら作品は少し物足りないけどまあ良かったね、程度だったし、確かに形式的には伏線散りばめられてて(母の不在、手負の鹿、娘の失踪の予感等)回収の方法によっては知らない世界にぶっ飛ばされたけど、あの唐突な事件で物語を締めることが許されるほど過程が実質的に練り込まれてはなかった

濱口監督がブレッソンの影響受けてて、ドライブマイカーでも今作でも演出において上手く引き継いでる感じはあるし、今作でミツバチのささやきの意識をしたのも言ってるみたいだけど、濱口監督自身の理念的葛藤が形式に結晶化してる感じはなくて、形式ありきで製作してる感じが浅いなと思ってしまう

映画が凄い好きなんだろうし色んなエッセンスを取り入れて良い作品を作りたいのは分かるんだけど、もっと素直に理念的葛藤をさらけ出してみて形式は後からついてくる感じの、形式的には不完全でもこっちが庇いたくなるような作品に若いうちは挑戦して欲しい

ドライブマイカーとか今回の作品が過剰に評価されると、それが濱口監督の今後にとってテクニカルなことを意識しすぎて内容が伴わない方向に導くことを懸念してる

濱口監督の演出力は間違いないしシュールな笑いの部分は、あんなに劇場で人が笑ってるの中々みないし絶妙な塩梅の軽さを作り出す力があると思うんだけど、とにかく真実味がもっと欲しい
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