ずが

悪は存在しないのずがのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ラストシーンの解釈が難しい映画だったと思う。個人的な解釈としては、親子にとってとても大切にしていた自然がグランピングによって破壊されるのはやはり許すことは出来ず、ラストで手負いの鹿から娘を止めなかったのも誰からも娘と自然の関わりを妨害させないという意思が感じられた。もうひとつの考察としてこちらは恐ろしいのだが娘が鹿に襲われるのを止めなかったのは無意識に死んで欲しかった説。1人で森に入るから危険なのに迎えを作中で2度も怠ってしまったり娘に対して関心が薄いようにも感じたシーンがあった。こっちだとしたら娘は鹿に襲われて死んでしまったという考察も出来てしまう。

全ては車内で3人がグランピング場所に侵入する鹿の話をした時点で結末に決着が着いていたように感じる。鹿がグランピング場に入らないように柵を立てる話になった時、主人公がそこに元々存在していた鹿はどこに行くのか訪ねたところ、『どっか他の場所に行くだろう』と他人事だったのが主人公からしたら鹿だけの問題ではなく元々住んでいる人々も同じ扱いをされるだろうと感じたのではないだろうか。

グランピングの説明に来た芸能事務所の担当者の高橋がら印象的。初めの説明会で住民の勢いと理詰めでボコボコにされた後、帰ってから社長やコンサルの前で何とかしようと頑張ったりいっその事自分が管理人をやるというのが冗談だと思ったら結構本気だったのが面白かった。薪割りやうどん屋のくだりでは劇場でも所々笑いが起こっていたしいいキャラクターだった。ただ森に手を出すことはそんなに甘いことではなく最後主人公にわけも分からず絞められちゃったから1番可哀想な存在だった。死んでないことを祈る。

序盤から自然の美しさとそこに生きる人達の営み。そこにグランピングの説明会で一気に話が締まり、笑いもある。完結しない幾通りもの解釈ができるラストも素晴らしい映画でした。
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