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悪は存在しないのトウのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
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木々の中を下から見上げる冒頭、空の中を毛細血管はみたいに張りめぐる木枝。巨大な生命の中に気まぐれで人間は生かされてるだけみたい

水は上から下へと流れ、下流に住む人たちが割を食うって話の中で、森は全てを受け入れる最下層に位置すると同時にあらゆるモノの最上位にある。子どももそれに似ていて、花ちゃんは森のメタファーだと思った

水挽町の上流にいるように見えたプレイモードの2人も実は社会構造の下流にいて、社長もその少し上にいるだけで上流から流れてくる毒をずっと飲まされている。すべての上位に国があるようで、本当のところ総てコロナウイルス(自然)の煽りを受けている。人間が自然をコントロールしているように見えているだけで我々は自然の中にある。都会の人たちがグランピングへ日々のストレスを捨てに行くように、自分より下流にあるものには一方的に救いを求めてしまう。けれども、何年かに1度山火事は起きるし、我々はそれをどうにか遠ざけようとすることしかできない。プレイモードが開いた説明会を花ちゃんが覗こうとするのを、村人が窓を閉めて遮るシーンに詰まっているような気がする

グランピング施設に居場所を奪われる鹿に自分を重ねた黛。まるで都会の人が気休めにグランピングに行くようにその業務を巧に投げようとしていたプレイモード。手負いの鹿だったのは恐らく自分自身だった巧。作中ずっと掴めなかった巧のことがわかっていくような感覚が怖い

演出がめちゃおもしろくて時間を忘れて観れた
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