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悪は存在しないのreiraのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.2
映画の冒頭は、地面に横たわり空を見上げるアングル、長尺で木々が映される。静かな、でもどこかミステリアスな音楽が少しだけ恐怖心を植えつける。

「やり過ぎたら、バランスが壊れる」

冒頭の木々から、クラウンシャイネスを想像する。木々は折り重なっているようで、お互い、触れそうなギリギリのところで程よく距離を保っている。病気を移したりしないようにとも言われるが、自然のものはそんなことを考えていないという説もあるらしい。

田舎では特に、人間関係も似ているのかなと思う。お互いの距離が近く、家族のように助け合える一方、境界線が曖昧になることもあるのではないか。

都会と田舎。自然なものと、人工的なもの。
善と悪。すべては、ハッキリとした両極端と言えるのか。もっと曖昧なものでは? 両方を持つことはないのか。

ラストシーンは、今でもどう捉えればいいのか、まだ分からない。自分なりの解釈を、まだ探している。

人間の世界よりも、自然にほんの少し近い感覚で生活する主人公。傷つけられた鹿のように、選択肢を奪われた彼が、これ以上バランスを崩されないよう、必然として取った行動。だからやはり、悪は存在していないということだろうか。

この考えに確証を持てるまで、何度も見直したい。
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