みむさん

僕はキャプテンのみむさんのレビュー・感想・評価

僕はキャプテン(2023年製作の映画)
4.0
イタリア映画祭にて。

想像していたものとほんの少し違ったし、想像していたよりいろいろ凄かった。豊かさに憧れ欧州に渡ることを決意したセネガルの少年の視点で描く越境映画。容赦ない。
2023年はマッテオ・ガローネ監督とアグニエシュカ・ホランド監督の越境映画がベネチアのコンペで競った年だったんだな。(そして両方とも受賞)

危険なリビアを経由してイタリアに毎年多くの移民がやってくるニュースは読んだが、この映画はサハラ以南からリビアを経由しヨーロッパに渡る過酷なルート、しかも紛争や貧困だけが理由ではなく、少年の欧州への憧れから軽い気持ちで決行してしまうパターンもあり、それは他国の豊かな生活ぶりなどを簡単に見ることができる現代ならではの部分でもあるので、想像していたものとはほんの少し違う人物設定だった。

「みんなやってるから」っていう根拠なき自信、一番厄介だと思う。鬱陶しくてもおとなの言うこは一通りきちんと聞きましょうとも思う。
案の定の展開になるわけだし。

その少年の1人が終盤で取る(取らざるを得ない)ある行動は実際にあり、その行動を取らせる大人にも悪どい思惑あり、いろんな問題が絡み合っていて単純ではなく難しい。
映画では希望があるように感じ少年視点でもあり「僕はキャプテン」はまさしくそうなんだけど、実際のその後を知ると何とも言えない気持ちになり凹む。
そういう意味であそこで終わらせたのは良かったと思う。
良く転じたとしても悪く転じたとしても。

紛争から命懸けで逃れる人は危険も承知で最後の手段として移動を決意するんだろうけど、軽い気持ちで移動できると思っていた少年たちにはあまりに過酷な旅だった。そりゃ途中で戻りたいとか思うわな。

劇中でも描かれていたが、危険で過酷なルートで多くの人々が道中やリビアで亡くなっている。

それでも目的地に着くことが出来たなら一旦は目的達成だろうけど、困難はまだまだ続くよね。
あの少年の母親はどう思うだろうか。

いろいろ考えてしまう映画だった。