いち麦

フェラーリのいち麦のレビュー・感想・評価

フェラーリ(2023年製作の映画)
4.0
愛人とその間に生まれた息子をこよなく愛する一方、妻への愛情はすっかり冷めてはいるがビジネス・パートナーとして縁を切ることができない苦悩。さらに強欲・傲慢な上にかなりの策士であったこと等々、公私両面・全方位からエンツォ・フェラーリという男を描いていて不快な人物像がよく掴め見応えあった。逆にいうとやや散漫な印象を与えているのかも知れないとも思った。それにオーナーとしてよりもテクニカル・プロフェッショナルとしてレースに熱くなる姿がもっと見たかった気もする。
ロードレース「ミッレミリア」の模様は、事故での惨状を映す映像のあまりの生々しさに驚いたが、車体とドライバーの見通しが悪かった。それにしてもレースを走る車の何台もがブレーキ・ペダル不良なのは、勝つことが全て、ブレーキは忘れろと宣うエンツォに当てたギャグか(笑)。

P.クルスが訛った英語(彼女のことだからきっとイタリア語訛りを意識しての喋り方だったと思う)をわざと話していたのは、本来はイタリア語であるべき台詞の代替とした演技アイデアだったのだろう。A.ドライバーの喋り方も彼女ほどではないが同様。なるほど流暢な英語よりはいいと思った。

字幕翻訳は松崎広幸氏。
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