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フェラーリのumisodachiのレビュー・感想・評価

フェラーリ(2023年製作の映画)
3.2


マイケル・マン監督作品。フェラーリ社の創業者エンツォ・フェラーリを主人公にしている。

1957年。ひとり息子を亡くしたエンツォは、共同経営者でもある妻ラウラとの関係悪化に悩まされていた。経営状態も最悪だし、さらには長年の愛人とその間にできた息子のことを妻に知られてしまう。そんな中、エンツォは再起を賭けてイタリア全土を縦断する一大レース「ミッレミリア」に挑むのだが……。

うーん。シンプルにあまり面白くなかった。というのも、焦点が定まっていない印象を受けたのだ。

息子の死による喪失と夫婦関係の悪化を描きたいのか、レースに賭ける狂人的ともいえる執念を描きたいのか。レースシーンは迫力があるのだが割合が短いのと、ラウラ役のペネロペ・クルスの演技が際立って良いのでそのインパクトが強烈で、結局のところ共感性が欠如した欠陥人間であるところのエンツォさんがずーっとしみったれた顔をしているだけでしたよね?みたいな感想になってしまった。

ラウラと共に会社を立ち上げたところから描いてくれればいいものを、1957年だけを切り取るので前段階の彼らの関係値がよくわからない。息子も友人も失って辛い……みたいなことを何度かエンツォは言うのだが、それも全部セリフでしか示されないので辛さがあまり伝わってこない(ラウラが息子の墓で見せた表情は真に迫っていてグッと来たのだが)。しかも、息子が亡くなるずっと前から愛人とは続いていたわけだよね?夫婦関係の悪化や息子の死と不倫あんまり関係なくない??となってしまい、どう受け止めていいのかもよくわからないまま物語が進んでいってしまった印象。

あと、ミッレミリアのシーンは映像的に迫力があるし、車好きの人ならばさらに楽しめると思うのだが、事故の描写がちょっと克明すぎてちょっと引いた。クラッシュするドライバーの遺体は一度も見せないのに、巻き込まれた被害者の姿をあそこまでガッツル描く必要ってあるんだろうか?やや悪趣味に思えてしまった。

アダム・ドライバーは悪くはないが、いかんせんペネロペ・クルスが良すぎたので完全に食われてしまっていたかなー。なんなラウラを主人公に物語を構築した方が面白くなったんじゃないだろうか。

最後に。イタリア語鉛の英語で話すのは絶対に許容できない。『ハウス・オブ・グッチ』でもそのことについては書いたが、本当に意味が分からない。しかも本作については訛り度合いも人によってまちまちで、最後までテキトーな感じがしたからさらに良くない。
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