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人間の境界のiccoのレビュー・感想・評価

人間の境界(2023年製作の映画)
3.8
幸せになれる土地を求めて移民になったはずなのに、それとは程遠い深い森に囲われて動けない。
当事者は勿論、観客もなぜそうなっているのか全くわからないまま、暴力的に二国間をピンポンさせられる大混乱から逃れられない苦しみが続く。
危険から逃れるために移民になったのに更に危険で不安定な場所に居続けなければならない、そして何故そうしなければならないのかが全くわからない。
なぜ?なぜ!?なぜ先に進めないの??

救いの手も届く範囲が決まっているので、助ける方も助けられる方もその範囲にいる時でないと行動すらおこせないので、運にかけるしかない。

敵のように見える国境警備隊の人たちも全員が任務に納得をしているようではなかった。どんなものでも見慣れるのかもしれないけど、どんな事でも必死に救いを求めている人を冷たくあしらうのは、人によってはやはり胸が痛むだろう。
倫理観も人によって違うのは、よかった事なのか、もうそれすら疑問に思ってしまう出来事が続く。

アフタートークでは、このピンポンにはどんな意図があるのかについて、それをみる側によって見え方が違うと教わった。
ポーランド側にしたら、彼らを兵器として使うハイブリッド攻撃であり、移民を送り込むことによって国を不安定化させているので送り返しているということらしい。
(ベラルーシ側はきちんと覚えてないので割愛)
難民は国際法的に不法に入っても送り返したら行けない国際ルールがあるので、ピンポン状態は非人道的、酷いことしてるという考えはあるから、国境付近は立ち入り禁止にしたとのことでした。

ラストの一幕がこの監督が一番言いたかったことが詰まっている、との話でしたが、なるほどウクライナは全面的に積極的にヘルプの手を回し、生活の補助までしているのに、ベラルーシからの移民との違いにただ疑問と胸の痛みを感じました。
今まだ世の中で起こっている事らしいので、ぜひ知って欲しいと思います。
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