NaokiAburatani

DOGMAN ドッグマンのNaokiAburataniのレビュー・感想・評価

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
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何となく、ドッグマンの見た目がジャック・ニコルソンのジョーカーに似てるような気がしたんだが、話の内容はホアキン版ジョーカーだった。
生い立ち(ボーよりよっぽど恐れている酷い人生)や障害により社会的弱者になってしまっていることや舞台が救いになっていることも結構類似しており、ラストの衣装が紫スーツだったのも、ひょっとして狙ってやったのでは?と邪推してしまった。
舞台がゴッサム・シティで留置場がアーカム・アサイラムと言われても違和感ない‥

だが、映画自体に二番煎じ感はあまりなく、全体的にかなり楽しめた。
昨今配信サービスで視聴すること前提なのか、長尺作品が多くなっている傾向を感じるが、今作は2時間弱で腰に優しく、かつドッグマンという人間が何故生れたのかというのを社会問題を交えつつ説得力を持って描き出せていたことに感心した。最近音沙汰を聞いていなかった気がするが、流石はリュック・ベッソン監督だ。

冒頭いきなりドッグマンが検挙されて、留置場でシングルマザーの精神科医によるカウンセリングを通じて今に至るまでの生い立ちを回想していくというのがストーリー構成。
精神科医が鑑賞している自分の気になった点を尽く質問してくれたのがありがたかった。
そのストーリー構成が故に、良く言えば安心して観れる。逆に言えばある程度先が読めてしまう。それでも隠れ家にギャングが攻めて来た時は緊迫感があったのは確か。
初恋と失恋については、悲しくて胸が潰れそうになった。

さて、今回の肝と言っても過言ではない犬たちの演技だが、世間的に評価されている落下の解剖学よりもこっちの方が凄いのでは??と思えるくらいに見所になっていた。大小様々な犬が余す所なく活躍しまくり、犬好きにはたまらない映画になっているのではないかと。ドッグマンが犬達と完璧に心を通わせている(というか意思疎通が出来ている)のを観て念能力を思い浮かべたのは自分だけだろうか。

保険会社の男がめちゃくちゃ優秀だった。通報しなかったのは盗品をネコババしようと欲張ったからなのだろうか?ギャングもそうだが、基本因果応報が早いので、そういう意味では爽快感もあった。

ただ、気になる点もいくつか。
ドッグマンの実家の周りご近所が一切描かれていなかったが、そこまで敷地が広い田舎のようには見えなかったから通報とか普段からされてそうなもんだけど、その辺の描写は特になかった。
舞台の歌唱は口パクなんだろか?歌唱力凄すぎて面食らってしまった。
アジトは不法占拠なんではないか、と思うが、監視カメラや電子扉なんかは業者が来て作業してくれたのだろうか?張り巡らされた罠の数々も。だとしたら、その業者も大概だな。
ドッグマンとして名を馳せて一般市民からお悩み相談受けていたが、そんな活動してた様な描写がなく、ギャングには認識されてなさそうだったから知名度が高いのか低いのかイマイチ分からなかった。
勤務先のドラァグクイーン達とは仲良くしていたからこの手の話の主人公にしては孤独感が薄かった。
そして一番の問題?は公開規模が少な過ぎて劇場探すの苦労したこと。

生い立ち、思想、価値観、宗教観、生活、特殊能力、犯罪歴、行動と全てがアメコミヒーローものにおけるヴィランの素養を満たしており、個人的にはバットマンと闘ってもらいたいところ。
昨今のスーパーヒーロー映画疲れに一石を投じられたのではないだろうか。続編観たいなぁ。
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