靴暇

DOGMAN ドッグマンの靴暇のレビュー・感想・評価

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
4.2
序盤、兄の十字架のネックレスを印象的に映していて、カスなのになぜか敬虔なキリスト教徒であるという人間性のグロさを際立たせていたんだけど、それが終盤になってきて「なぜ"DOGMAN"であるか」という、非キリシタンにもテーマがわかりやすい構造になってて観やすかった 
"IN THE NAME OF GOD"を小屋の裏側から見た時にタイトル回収される演出の鮮やかさだけじゃなくて、神なる父性(に人間として認められず見限られた者として)のアンチテーゼとしての犬への母性が効いてた

個人的には、相棒の犬たちとの連携で泥棒を働く、エンタメとしてワクワクできるシーンも、精神鑑定医からの「富の再分配は政府の仕事であって、犯罪の正当化はできない」という冷静な視点によってちゃんと断罪して弱者に移入させすぎないことでダークヒーローとして描き出してるところが良かった

観終わった後、『MIDNIGHT SWAN』を思い出したんだけど、主人公がドラァグクイーン/ニューハーフという相似よりも、絶望の中で染み付いた諦念から漂う色気と、最後まで自分のありたい姿で運命に抗いながら気高く終わるあたりが似通うのかも
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