直美への愛に溢れた元大学教授の目。かと思えば、繋がりも何もなかったかのように、吐き出される言葉。彼本人だけが知るぐしゃぐしゃな心を、藤竜也が驚くべき演技力で観客に伝えてくる。認知機能がどんどん落ちていく恐怖。書き付けずにはおれない記憶の付箋の数々。変わり果てた陽二に呆然とするだけの直美。アンテナや電波は、己の見えない危険に対抗するもの。
親子としては温かさに欠けた関係ではあるが、認知症の父に対して、誠実に向き合おうとする"たっくん"森山未來に安心出来た。
時系列を巧みに操った脚本は秀逸だが、そもそも、何故公的支援に頼らないのか。四半世紀前じゃあるまいし。原日出子に狂気は感じず。それがモヤモヤ。
