森山未來さんそのものといった風合いの演劇。契約。大河ドラマの脇役。理屈屋。交信。普通という実態のない概念。日記。弁当。息子同士。「もう別の世界にいるというか」。引取人。卓が父に不満やイライラをストレートにぶつけないのが意外。「気にしたこともないよ」。もう心の中で父を消していたと解釈することもできるけれど、数十年ぶりに会いに行ったり妻を紹介していたりと不思議な関係。彼なりの復讐もしくは防御なのかもしれない。卓の母はどんな人物だったのかが非常に興味深い。ベルト。詩的な手紙。「あなたの故郷がこの海なのであれば、わたしの故郷はあなたです」。音楽で雰囲気を語りすぎているシーンは、もう少し静かに味わいたかった気もする。時系列が前後しても混乱せず観られたのは、藤竜也さん森山未來さん両名の力量が大きいように思う。藤竜也さんの繊細な変化の表現力には特に感心させられた。それにしても認知症という病はやはり…残酷だ。