歩く肉

マリーナの歩く肉のネタバレレビュー・内容・結末

マリーナ(1990年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ずっと観たかった映画のひとつで漸く観れた。断片的なエピソードでなぞる支離滅裂な内面世界。『ピアニスト』に近い狂気を予想していたが、もっと抽象的で混乱していて、意識の流れを扱った作品だった。(脚本を手がけているのはなんと『ピアニスト』の原作者のイェリネク)
まずユペール演じる作家に名前はないが、一緒にすむパートナーの男性にはいかにも女性的な「Malina」という名前が与えられている点を鑑みれば、両者は同一人物の異なる自我だろう。Malinaは暴れるユペールを辛坊強く介抱し、叱咤する。いわば理性的な一面を担っており、若しくはアニムスとも言えるかもしれない。対してユペールはトラウマに苛まれていて常に不安定で感情的、作家の人格における核のようだ。だから本作は幼少時のトラウマによって精神を患っている主人公の両性具有的な内面を描いた作品なのではないかなと思っている(或いは、創作におけるpatriarchyなテクスト中の女性作家の葛藤とも捉えられるかも知れない。)
アパルトマンはそのまま内在空間を表していて、だから終盤燃え盛る部屋の中で壁の亀裂をふたりでテープを貼ったり剥がしたりするのは、むしろその意図するところがわかりやすいくらいだが、なかなかに凄まじい光景だった。
英語字幕で観て、理解が及ばない部分が多々あるから、近々インゲボルク・バッハマンの原作も読んでみたい。
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