chinsuko

ぼくは君たちを憎まないことにしたのchinsukoのレビュー・感想・評価

4.0
2015年に起きたパリの同時多発テロにより妻を失ったアントワーヌ・レリス氏の原作を元に映像化。

題名はレリス氏がテロリストに向けた手紙をネット上にUPした文面の一節。

壊れそうな心を整理すべく前向きに書いたものであり、息子に愛情を注ぐ姿は、強くもあり懸命に生きようとする強い意思を感じる。

しかし、妻を失った心の溝は大きく時間が経つにつれ、悲しみは大きくなり、気づけば妻の残した衣類に妻の影を追ってしまっている。

息子はまだ幼児で、母の死は理解できないため、アントワーヌが母の分まで懸命に育てる様に心打たれる。

手記をネットに上げた反響は大きく、マスコミにも取り上げられてはいるが、「何故書いてしまったのか」と自責する。

本作は妻を失ってから2週間の出来事を描いているので、アントワーヌの心が落ち着くことは無い。

「時が解決する」と言えるかもしれないが、アントワーヌに平穏が訪れるのは10年かそれ以上かかってしまうかもしれない。

息子が大人に成長し、父の苦しみを理解出来るようになるまで、苦しみは続くかもしれない。

また「許す」という勇気ある発言が言霊となり、復讐の連鎖を止める効果があったと思うと、SNSは悪い事ばかりでは無いという気にもなれた。
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