ヒノモト

女優は泣かないのヒノモトのレビュー・感想・評価

女優は泣かない(2023年製作の映画)
4.0
不倫スキャンダルで女優の仕事を失った梨枝が、若手ディレクター咲とともに、生まれ故郷熊本で密着ドキュメンタリーの撮影を行うことで、お互い再起を図ろうとするが、家族や知り合いとの再会から起きる顛末のお話。

ベタな設定でありつつも、シナリオ展開の面白さ、コメディ味の伏線をシリアスで回収していく気持ちよさもあり、そこに魅力的な登場人物たちのおかげで、より良い味わいのある映画になっていると思いました。

親子間の確執や想いのようなウエットの設定をドキュメンタリー撮影の裏側とそのトライアンドエラー、芸能という自身を切り売りしていくことの性が、物語に上手く落とし込まれていて、ベタさ日本映画臭さを回避して、面白味に転換できているところが、今作の良さだと感じます。

ビデオカメラ内映像シーンは、若手ディレクターを演じた伊藤万理華さん自身の撮影素材を使っていたりして、映画内ドキュメンタリー撮影の嘘がないのも、生々しく感じるポイントにもなっていたり、主演の蓮佛美沙子さんがカメラが回っているシーンだけが若干演技が下手に見えるギリギリのナチュラルさと演じ分けに魅力があり、作品づくりの面白さに大きな作用を及ぼしていて、2人の距離感そのものが映画としても面白かったです。

若干制作者側の視点、若手ディレクターの立場としての振る舞いが、どっちつかずというか人生の迷いが描ききれないことで、雑に見えてしまうところがありますが、エンドロールの後で少し救いがあることで、そこも回収していることの驚きもあり、後味も大変良かったです。
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