ビンさん

隣人X 疑惑の彼女のビンさんのレビュー・感想・評価

隣人X 疑惑の彼女(2023年製作の映画)
2.5
熊澤尚人監督の最新作は、パリュスあや子の原作を監督自身が脚色し映画化。

惑星Xで戦争が起こり、X星人は地球へ亡命。
人類を傷つけない固有性を持つX星人ゆえ、まずアメリカが受け入れを表明。
続いて日本も受け入れる。
しかし、人類に擬態するX星人を誰も見たことがなく、自分のそばにいる人がX星人かもしれないという疑念と恐れと興味の中で人々は日々の暮らしを送っている、というけっこうハードSFな設定。

週刊誌記者の笹(林遣都)は、編集部の命でX星人の実態を取材する。
調査会社からX星人と思われる人物の資料が配られ、笹は柏木良子(上野樹里)とリン・イレン(ファン・ペイチャ)という二人の女性を取材することになる。
良子はアルバイトで生計を立てている女性。
リンは台湾からの留学生。
共に同じコンビニに務めている。
スクープを手にしたい笹は、良子にコンタクトを取るのだが・・・。

最初はスクープ目的だった笹が、良子と接触していくうちに恋愛感情が生まれ、二人は深い仲になっていく、というのはよくある展開で、本作はそこにSFの要素が加わっているのだが、正直なところ本作にSFの味付けは必要だったかな、と。

X星人亡命云々というバックボーンにしても、画面に説明文が表示されるだけで、たとえば宇宙船が飛来してくるとか、アメリカがX星人とコンタクトを取るシーンとか、そういうものは一切ない。

要はSFでなくても、どこか架空の国で内紛が起こって、その亡命者を受け入れた時、人々はどう対応するだろうか、というのがテーマ。

映画は笹と良子の物語が、笹の疑念の中で綴られていくという、ヒューマン・ラブストーリーという内容。
一方のリンもバイト先の同僚仁村(野村周平)との恋愛ドラマが展開する。

いや、ほんとにSFの要素、要る?

派手なSFXがなくったって、工夫次第でSF映画は撮れる、みたいなのを実は期待して観に行ったのだが、物語はどんどんSFから反れていくのだ。

いや、描かれることには納得もするが、やはりSFを期待した身としては、結末も含め多少啞然とした内容だった。

はたして良子とリンはX星人なのか、というミステリーな味付けも、途中でどうでもよくなっていく。
ここでは詳細は書けないけれど、あの結末は・・・まぁ興味を持たれた向きは実際に鑑賞されたし。

演者さんたちの演技も良かったんだが、思ってたのと違う感が強すぎた一作だった。
ビンさん

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