ぬう太郎

トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代のぬう太郎のレビュー・感想・評価

4.9
没後十数年が経ち、なぜこの時期に映画として作成されることになったのか疑問に感じていた。在りし日の肉声テープや映像を使い、また遺書を残して自殺に至った環境や真相を解き明かすようなものと想像していたが、全く異なっていた。
この映画は彼を知る関係者の言葉をつむぎ、時系列で世に解き放った音楽とその背景を、その時代の音楽の先駆者として紹介されている。どの関係者も高齢となり(既に亡くなった方も多く)インタビューも容易ではなくなりつつあること、またSNS等により多種多様な音楽が溢れている現代、実はひと昔前に既にこんな音楽を作っていた日本人がいたことを紹介する良きタイミングなのだと感じた。
ところで彼を知らない若者はこの映画をどのように受け止め、感じるのだろうか。一部関係者の言葉が理解できない部分(例えば、ZUZUというのは安井かずみさんのこと)があるのではないか少々気になった。ニコ動やウィキペディア等で少しバックボーンの知識を得てから観るとよいのかもしれない。
また関係者の言葉を並べた記録を「映画」にする意味があるだろうかとも思われるかもしれないが、多くの日本人が耳にしたことのある楽曲を随所に挟んだ編集になっており、映画館で『聞く』価値のある映画だと思う。
学びたてのギターのスリーフィンガーで初めて弾いた楽曲「あの素晴
らしい愛をもう一度」。歌詞も含め、あらためて名曲だと感じさせられた。
ぬう太郎

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