サマータイムブルース

トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代のサマータイムブルースのレビュー・感想・評価

5.0
加藤和彦(愛称/トノバン)の音楽ドキュメンタリー映画です

と言っても知らない方多いと思うけど、1970年代後半くらいから活動していたミュージシャンです
名前は知らなくても「あの素晴らしい愛をもう一度」は聴いたり歌ったりしたことあるんじゃないかな
あれを作曲した方です

映画館はガラガラを予想して行ったら、席はジジババで埋め尽くされていました(笑)

私はずっと洋楽中心に聴いて来たので、実は邦楽ロックあまり詳しくないです
それでも“サディスティック・ミカ・バンド”好きだったので、この映画のことを初めて知った時、見たい!!と思いました

さて、私が加藤和彦の音楽と初めての出会ったのは“フォーク・クルセイダーズ”のデビューシングル曲「帰って来たヨッパライ」です
オリコンチャート史上初のミリオン・シングルとなった曲です
子供の時、姉ちゃんや友達と大騒ぎして歌ってたの思い出します

面白かったのは自主制作されたファーストアルバム「ハレンチ」の作成秘話
LPレコードが30cmと聞いてジャケットを30cmで作ったらギリ入らなかったという逸話
そりゃ1cmくらいは余裕取らなきゃ入らないわ(笑)

この頃はベトナム反戦歌のプロテストソングとしてフォークミュージックが台頭しました
その後ポピュラー化して「神田川」や「赤色エレジー」など“四畳半フォーク”なるものが流行りますが、フォークルはそれらとは異質なものでした

他には「イムジン河」「悲しくてやりきれない」など

そして“サディスティク・ミカ・バンド”
メンバーは
加藤和彦、加藤ミカ、つのだ☆ひろ
後に、高橋幸宏、高中正義などが加入しました

加藤ミカは当時の和彦の奥さん
バンドネームはジョン・レノンとオノ・ヨーコの“プラスティック・オノ・バンド”をモジって作られました
何度か解散、再結成を繰り返し、松任谷由実を迎えた時は“サディスティク・ユーミン・バンド”、木村カエラの時は“サディスティク・ミカエラ・バンド”と名乗ってました
他にも桐島かれんさんをボーカルに迎えたりしました

“サディスティク〜”は日本より海岸での評判が高く、彼らのセカンド・アルバム「黒船」は、ビートルズの「ホワイトアルバム」やピンク・フロイド「狂気」などを手掛けたプロデューサー、クリス・トーマスがプロデュースしたもので、海外でも発売されました
その後“ロキシー・ミュージック”の前座として全英ツアーを行なっています

ここでは加藤ミカとの逸話が面白かったです
プロデューサーの新田和長和彦が、和彦に、妻が2ヶ月も帰ってこないんだ、と相談されて、そのうち帰って来ますよ、と慰めていたら、実はクリス・トーマスと恋仲になっており、既に彼のもとに身を寄せた後だったという話
その後和彦は失踪して本当に心配したんだ・・・
えーー、トーマス!!仕事仲間なのに人妻を寝とるなんて酷くね?そりゃないよ!!
ミカのこと音痴とか言ってたくせに(笑)

「タイムマシンにおねがい」「怪傑シルバー・チャイルド」など

“サディスティク〜”BBCのスタジオライブ「塀までひとっとび」を貼っときます
もし興味ある方はご覧あれ

https://youtu.be/XCfLnopIhng?si=JBAveUxMQZf2lD0u

さて、その後ソロで“ヨーロッパ3部作”と呼ばれる「パパ・ヘミングウェイ」「うたかたのオペラ」「ベル・エキセントリック」を発表
他のミュージシャンに積極的に楽曲提供もしています

時代と共に、その音楽性も変化し続けた偉大なミュージシャンであるのは間違いないです
甘いマスクに高身長、オシャレで、料理の知識と腕前はプロレベル、当時のファッション・アイコンでもありました

CAST:きたやまおさむ / 松山猛 / 朝妻一郎 / 新田和長 / つのだ☆ひろ / 小原礼 / 今井裕 / 高中正義 / クリス・トーマス / 泉谷しげる / 坂崎幸之助 / 重実博 / コシノジュンコ / 三國清三 / 門上武司 / 高野寛 / 高田漣 / 坂本美雨 / 石川紅奈(soraya) など

ARCHIVE:高橋幸宏 / 吉田拓郎 / 松任谷正隆 / 坂本龍一など

2009年10月、加藤和彦はうつ病による首吊り自殺で生涯の幕を閉じました
62歳でした

遺書の一部にはこう書かれていました
「私のやってきた音楽なんてちっぽけなものだった、世の中は音楽なんて必要としていないし、私にも今は必要もない」

ラストは映画のために結成されたバンド、Team Tonobanによる「あの素晴らしい愛をもう一度」の合唱リレーで幕を閉じます

閉幕後、館内は感動と拍手で包まれました
私も夢中で拍手しました