サマータイムブルース

ボヤンシー 眼差しの向こうにのサマータイムブルースのレビュー・感想・評価

4.0
見てる間ずっと心が重くズーンと沈んで締め付けられるような映画でした
劇伴は無し、ずっと不快な効果音が響き渡ります

オーストラリア人監督のロッド・ラスジェンさんの長編デビュー作です
東南アジアが舞台なのに、なぜオーストラリア!?という疑問が湧きますが、監督自身がこの問題を長年取材していて、フィクションとして落とし込んだ、ということです

カンボジアの14歳の少年チャクラ(サーム・ヘンくん)の家は貧困家庭で、いつも自分ばかりきつい労働をさせられることに不満を持っていました
彼は、金を払えばタイで金になる仕事を斡旋するブローカーに紹介する、という怪しすぎる友達の情報を頼りに、単身家を飛び出します
案の定金のないチャクラは騙されて身売りされ、タイの漁船に引き渡されます
そしてそこで奴隷として1日22時間の労働を強いられるのです
食事はわずかに与えられる米と水だけ
共に強制労働する仲間との関係もギスギスしています
船長たちにちょっとでも逆らうと拷問され、殺されて海に投げ捨てられます
終わりのない地獄のような日々が始まります

乗組員は船長を含め屈強で、見るからに悪そうな3人の男たちです
チャクラは他の奴隷たちに比べて若く、体力もあり、覚えも早くて、船長に割と気に入られます
チャクラは生き抜くために彼らに取り入って、仲間になる、まではできなくても、なんとか上手く立ち回ることはできたかも知れません

ただチャクラはクメール語、乗組員はタイ語で互いに言葉は通じません
もし仮に通じたとしてもチャクラにそんな意思はないようです
ただただ、怒りと、憎しみと、恐怖の眼差しを向けるだけです
あの目は「存在のない子供たち」のゼイン少年と重なりました
最後ちょっとだけ微笑むのも同じ

コレが現代の話であることに愕然とします
今でも20万人の男達が奴隷労働に従事しているそうです

チャクラはどこへ向かうのであろうか・・・