コブヘイ

FARANG/ファランのコブヘイのレビュー・感想・評価

FARANG/ファラン(2023年製作の映画)
4.0
家族を殺された怒りが肉体を染めて悪に炸裂!
殺し屋ではない、格闘家設定によるリアル寄りバイオレンスアクション!!

予告編で煽ってくる血まみれバイオレンスアクションにフラフラ誘われて鑑賞。タイトルの「ファラン」はタイ語でよそ者を意味するそう。
開幕はフランス。出所したばかりなのに地元のギャングに纏わりつかれ、逃げている内に誤って一人を工事現場から蹴り落として死なせてしまう主人公格闘家サム。逃げたタイで漁師と空港のポーター、時々ムエタイのかけ試合をしながら妻と出会い、娘と新しい子供も生まれる予定の幸せな暮らしをしていた。 しかし、妻の夢を叶える為につい地元のギャングを手伝ったことから最悪の事態となり、復讐の鬼となってギャングを追うドストレートなリベンジアクション。

まずは主役のサムを演じるナシム・リエルさんの見事に鍛えられたボディ! はっきりとわかる強靭さとしなやかさを感じさせて、実に見事な存在感。 格闘の切れ味も期待通りで、序盤のムエタイシーンでは閃光のような飛び膝蹴りを披露してくれます。

導入となる序盤はゆっくりめで、ムエタイシーンを入れながら彼の素朴ながら幸せな生活、周囲の人間関係を描く。
そして次に悪役。絵にかいたような分かり易くゲスイ造形が清々しい。
どうみても雑な麻薬の密輸を手伝うとそれみたことか失敗。証人を消そうとサムもろとも家族を襲うギャング。
さあ復讐のターン!
とは言え元特殊部隊でもCIAでもないサムは地道に聞き込み。ようやく右腕の男がいる場所を探り当て、パーティに侵入。
レッツバトル!
3人相手に鋭い攻撃で二人を撃退するも、刃物で襲ってきた3人目は武器を奪って反撃して殺してしまう。童貞を捨てた事による戸惑いを見せるサムがリアル。

アクションは基本はムエタイではあるものの手数は控えめ。 しかしそれぞれ実に鋭い一撃でリアルな格闘家が振るう暴力に見えるリアルさが実に良い。複数相手だとやや苦戦するところもハラハラして良い。 喉を切り裂かれてケチャップがピューと出たり、ショットガンによる近距離ヘッドショットを一瞬とは言え見せる演出がR18になったのかな?
ああビリヤードの球を使った顔面損傷も見せてたか。

飛んでクライマックスの大カチコミ。ここは映画らしいちょいと芝居が掛かった演出で敵を登場させた後、狭い通路での連続大人数バトル!
これまでのバトルで洗練されたのか、より鋭い攻撃を最小の手数で繰り出して一人ひとりと撃破するサムが強く美しい。
そこから更に狭いエレベーターでの4対1。ナイフに拳銃まで出る大混戦。
激しいバトルの中で炸裂するバイオレンス! ここで映画の本気が出た! 見慣れた自分でも「ヒイイ痛いぃぃ!!」と心が叫びたがっているんだ状態でした。
ラスト満身創痍のサム。ボスのナロンとの一騎打ちは残念ながらタイマンは無いものの、序盤に仕組まれた伏線でびっくりながら、絶体絶命の中で繰り出された「激怒」アタックで更にびっくり!!

R18ということで身構えておりましたが、ケチャップ量はフランス製作らしい演出として的確で適量。
「マッハ!」や「ザ・レイド」のようなアクションまみれのバトルものを期待していると少し喰い足りないかもしれませんが、主人公サムの見事な肉体美とリアルよりの格闘アクションは新鮮で実に見ごたえがありましたし、なによりリベンジアクションとして主人公が追い込まれる切ない設定がまた非常に味わい深い、血まみれ格闘作品でした。
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