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アイアンクローのせっのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.5

強くあれという呪い。

80年代に有名になったプロレス兄弟が呪われた一家と呼ばれることになった経緯を描いた話。

見る前から、「強さ」「男らしさ」「マッチョイズム」「父権的」みたいな話だろうとは思っていたのだけど、意外と父親の圧は映画内ではカットされてた。基本的に父親からの圧描写より、父親以外の微妙な表情の揺れを中心に描いているので、目に見えない何か強いプレッシャーと父親からの期待と強くあれという呪いに兄弟たちが確実に蝕まれているのがキツい。

呪いは無いけど、強さに呪われた一家の話。この一家は母親ですら強さと忍耐に縛り付けられていて、父親が勝てば救われると思い込んでいるように、敬虔なキリスト教徒だからこそ信じ続ければ救われると思い込んでいる。自分の息子が亡くなった時ですら涙を見せられない。信じれば救われる、勝てば救われる、強いようでいて問題から向き合うことをやめた弱さの表れなんだよなぁ。

というか、フォン・エリック一家のことは全く知らないで見たら、最初は微笑ましいスポ根ものだったのに徐々にデスゲームの顔を覗かせてきて怖すぎた。次はお前だと父親に指名されたら死確定サバイバル。一緒にハンバーガー食べてずっと兄弟一緒に遊んでやけに仲良くて微笑ましい筋肉男たちと思っていたけど、いかにあの幸せな日々の描写が残酷だったか
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