前髪メガネ

アイアンクローの前髪メガネのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.4
1980年代初頭、元AWA世界ヘビー級王者のフリッツ・フォン・エリックに育てられたケビン、デビッド、ケリー、マイクの兄弟は、父の教えに従いプロレスラーとしてデビューし、プロレス界の頂点を目指していた。しかし、世界ヘビー級王座戦への指名を受けた三男のデビッドが、日本でのプロレスツアー中に急死したことを皮切りに、フォン・エリック家は次々と悲劇に見舞われ、いつしか「呪われた一家」と呼ばれるようになっていく。

プロレスというか格闘技とか全く観ないのですが、本作は史実に基づいたドラマなのにいろんな出来事が起き、息を呑んだ。。

父親が果たせなかった夢を息子達が継いで兄弟で挑むといった内容で、正直この手の「親が自分の夢を子に押し付ける」といった内容は好きくないので観ていて辛い描写が多かった。
もしかしたら“各々が望んだ夢”と信じ込んで観ると面白いのかもしれない。
というか、「呪われた一家」の意味が最初は栄光の輝きに届かないとか、事故や死が付き纏っているという解釈だったけど、実際は父親が息子達をチャンピオンに育てようとする執念と洗脳された息子達を指しているのではないだろうか。
少なくとも映画の演出的には後者でした。

勿論、時代背景的にも父親の背中に憧れる時代ではあるし、子達も少なくともプロレスの世界は息子達的には嫌いではなかったと思う。
やるからにはチャンピオンも本当だったと思う。ただいつしか自分がチャンピオンになるというか父の為、家族の為にの呪いにかかっていたのだと思う。
特に五男は唯一音楽というプロレスとは別の道を進みかけていたのに、あの事件をきっかけに音楽を手放してプロレスの道に進んだわけで。あのシーンにはゾッとした人も少なくないはず。

父親の悔しさもわからなくはないのだけど、、話が進むにつれ“父と息子“の関係性から乖離していって悩み苦しむ兄弟達が不憫で仕方なかった。

各兄弟みんな何かしらで不憫なのだけど個人的には次男に一番心が痛くなった。
兄弟全員の不幸を見てきたり、誰よりも父の期待に応えようと努力をしてきても報われないまま歳をとってしまったり、作品的に主人公だからそういう見せ方なのかもしれないが、史実ならばこんなに辛い人生もなかなかないはず。。

作中では日本との試合の話題も上がるのですが、該当シーンは無し。
ちなみに公式HPによると父親はジャイアント馬場やアントニオ猪木と戦っていたそう。
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