いしはらしんすけ

NO選挙,NO LIFEのいしはらしんすけのレビュー・感想・評価

NO選挙,NO LIFE(2023年製作の映画)
3.5
大島新率いるネツゲンの前田亜紀監督による選挙ライター、畠山理仁氏を追ったドキュメンタリー映画。先行してテレビ放映されたNONFIX版もチェック済みです。

主な撮影素材が去年の参院選と沖縄県知事選の取材ということで、同じネツゲンバックアップによる「ヒルカラナンデス」発の2作「劇場版センキョナンデス」「シン・ちむどんどん」のアザーストーリーとしての側面は必然的に内在。

で、ある種のクライマックスが明確なヒルカラの2作と比較すると、構成としてやや平板な印象は否めない。

ただもしかするとそれも畠山イズムの反映に思えなくもなくってね。

というのも大手メディアが黙殺するいわゆる泡沫、畠山用語で言う無頼系独立候補も国政政党の有名候補も同等/フラットに扱うのが畠山メソッド最大の特徴なのであって、そこに準ずるなら自ずと特定の候補にスポットが当たる作りにはなりにくい。

加えて候補者へのリスペクトが強いあまり、自身に必要以上にフォーカスが当たらないようなバランスを暗黙のうちに求めているきらいがなきにしもあらずで、そのへんの撮る側/撮られる側の揺れが趣深かったりもするのですが。

あとこれも候補者との共感シンクロ率の高さゆえか、どんな候補にも寄り添う姿勢が目立つため(選挙期間中というのもあるが)批評性が顕在化しづらく、このあたりも単純に「面白さ」みたいなものがスポイルされる要因なのかな?

例えばTBSラジオの澤田大樹記者的なジャーナリズムのあり方はまあわかりやすくキャッチーではあるとは思うのですよ。謎にビビられてる森喜朗に容赦なくツッコむなんてそりゃあ痛快じゃないですか。

でもそこにいけない/いかない畠山氏のジレンマと矜持は、まさに無頼系独立ライターであることに立脚していて、同じくらい長くフリーランス稼業を続けてきた者としてはそれこそ共感が喚起されまくる訳で。

そんな畠山さんが唯一怒りを露わにする局面、強いて挙げるならそこが起伏が大きい箇所で、それは相手が既存の組織政党ではないからこそ余計に感情を波立たされた気がしています。「最低限持たざる者に依って立つ建前だったのに議席獲得したらいきなり権力側の振る舞いなの?」みたいな。

そういやいつだかに糸井重里が「なめられて損することないよね」とか舐めたこと言ってて「はあ?いくらでもあるわ!」とムカついたことがあったんだけど、なんかこの手のなんちゃって弱者しぐさのやだみを思い出したりしましたわ。

ぶっちゃけ作品としての評価より畠山理仁推しの気持ちが上回った結果のこのスコアですが、その存在をより周知する意味では今最も多くの人に観てもらいたい映画です。