シャチ状球体

Saltburnのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

Saltburn(2023年製作の映画)
3.8
大学は基本的にクラス制じゃないから、誰とも話さなくても誰にも気にされない。だけド他の人達は全員友達が出来てるようで、残ったヤバい人だけが話しかけてくれる。この生々しい導入から始まる時点でこの映画はただものではないと感じさせてくれる。

そして、オリヴァーが恋するフィリックスが『ユーフォリア/EUPHORIA』のネイトなのだから。中に数々の星系が見える巨大な扉が開かれているのは自明だ。
ついでにオリヴァーと最初に一時的な話し相手になった"激情型インセル"もかなり個性的なキャラで、2人は同じ孤立しやすいタイプでも全く性格が違う……。

本来は一人で始まり一人で終えるはずだったオリヴァーの大学生活にフィリックスという変数が紛れ込み、オリヴァーが予期せず社会的な階層を移動してしまうという(あまりにも立場が不安定過ぎて)見ていられない話。
オリヴァーが段々と他の学生に認められていくのもフィリックスと親しい関係にあるからだし、本当に人間の一生って最初に用意された環境で9割くらい決まっちゃうんだね……。

フィリックスの家族も癖が強すぎるけど、資産があればメンタルヘルスが不調であってもリカバリーのためのリソースが潤沢にあるということで、貧困とは何かが逆説的に浮かび上がってくる。
資産家になれば大体の場でジャッジする側になることができ、たいていの欲望は満たせる。一介の学生が一度その世界に踏み入れてしまったら、その味を忘れることは一生できないはず。このグロテスクさを映画で体感できる機会が人生であと何回あるか……。

でも、内容的に実はアラン・ドロンの『太陽がいっぱい』の焼き直し。クラシック映画が好きな人向け。良い意味でも悪い意味でも見た目に騙されてはいけない……。
シャチ状球体

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