「人類と侵略者。敵対する君たちが仲良くなるために『敵』が必要なら、その役割は僕が引き受けよう。僕は絶対だ。」
いつ何が起きてもおかしくない巨大母艦が都心の頭上に浮かぶ世界。
どう考えても異常な状況なのに、それでも次第に慣れ、普段と変わらぬ日常を過ごす人々。
コロナ禍が明けた今だからこそ、余計にリアルに感じられる。
この作品のテーマは 「生きてこそ」。
「どう生きるか」ではない。
右や左の主義主張を超え、生きる意味を見いだせなくとも、生きていることそのものが正しい。
どんな人であろうと亡くなって良い命など無い。
個人的には、自殺は個人の問題ではなく「社会の問題」であり、誰にでも起こりうる普遍的な課題だと思っている。時に、それが最善の選択肢となる場合があるかもしれない。しかし、それをタブー視するのではなく、もっと社会的な問題として向き合い、皆で考えていく必要があると感じる。
テレビやネットとの付き合い方も重要で、門出の暴走や小比類巻の言動にも、その課題が色濃く映し出されている。
また、私たちは時に、知りもしない話題に対してネットの情報だけを鵜呑みにし、自分の知識のように扱いすぎている。それは知能が発達しすぎた人類の代償でしかないのかもしれない。
これからの時代を生き抜くためには、自分自身で物事を分別し、考える力を磨くことが必要不可欠だ。
最後の展開に衝撃を受けたため、偏った感想にはなってしまったが、原作未読でも十分に楽しめた。
先の展開を知らない分、ややテンポがゆっくりと感じられる部分もあったが、すべてが伏線として繋がるように思え、次回への期待が高まる。