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白石晃士の決して送ってこないで下さいのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.8
 ある種、白石晃司監督がモキュメンタリーの領域で偶然見つけたのは、ハライチの漫才のようなニッチな世界ではないか?それはお題を変えればそこから数通りのパターンが生まれるという費用対効果で言えば常人離れした新発見で、幾らでもバリエーションを試すことが出来る。但し観客が飽きるまでは。ホラー映画監督である私・白石晃士の元には「この動画を見て下さい」と言って、様々な恐ろしい映像が集まって来る。ある人は私が関連する制作会社に送ってきたり、ある人はSNSを通じて送ってきたり、ある人はイベントの時に直接手渡しをしてきたり。そうして私の手元には、おぞましい映像が大量に眠っている。今回は、その中からとっておきの映像をご覧いただきましょうという監督の口上は完全にヒッチコック劇場と「お待たせし過ぎたかもしれません」の村西とおるで、白石晃司監督はアルフレッド・ヒッチコックと村西とおるの間を行くような極めて高度な地点に観客をいざなう。もしくは『世にも奇妙な物語』のタモリか?

 今回も白石晃司の繋ぎ目の妙は止まらない。ホラー監督白石の元に送られてきた圭介(かいばしら)とユキ(有川舞衣子)という若いカップルからの映像。それは幽霊が出ると噂される薄暗い廃墟で撮影されたものだった。廃墟の奥深くに進むと突如、ユキの姿が跡形もなく消えた...慌てふためく圭介、やっとの思いで見つけ出した彼女の背後に、おぞましい雰囲気の黒い影が渦巻き、手には古いVHSテープがあった。白石がこの映像を見た後、いきなりカラメ(小倉綾乃)と名乗る謎の女性から、「すぐに圭介のことを調べろ」という脅迫めいた電話がかかってくる。しかもこの女、勝手に圭介の部屋に入り、圭介とユキを隠し撮りした映像まで送ってきた。この不可解な出来事をきっかけに調査に乗り出す白石。そこで分かったのは圭介の周りで起きていた不審な3人の女性の死...、さらにユキが持っていた古いVHSテープを見ると、ある廃村で起きた身の毛もよだつ恐怖の映像が映っていたのであった。今作はいわばモキュメンタリーにおける加虐性の物語で、廃墟ウォッチャーの女性(清瀬やえこ)に迫る映画YouTuber兼芸人・沖田遊戯の圧があまりにも強く、観ていて苦しくなる。然しながらカラメが取り持つ奇妙なシスターフッド的な連帯は見事なまでに時間・空間を超越する(ように見える)。完全に波に乗った感すら漂う白石晃司の手癖というか七変化のバリエーションを今回も心行くまで堪能した。
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