ツクヨミ

熱のあとにのツクヨミのネタバレレビュー・内容・結末

熱のあとに(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

愛が再燃する時悲劇を生む、衝撃と自己正義で突っ走るサスペンス愛憎。
予告編にて新しい社会派邦画だなーと思っていた本作を見に行ってみた。
まずオープニング、衝撃的な鮮血シーンで幕を開ける。どうやら実際に起きた"2019年新宿ホスト殺害未遂事件"に着想を得た話らしくその事件直後を描くショッキングさに呆然とした。
まあストーリーはそんな事件後数年、刑務所から出所した加害者である主人公を軸に展開されていく。まずこの主人公のキャラがけっこう強く愛が強すぎて狂気的な行動を起こしてしまう内向的なヤバいやつって感じが、"私オルガヘプナロヴァー"のオルガにそっくりで共感してしまう自分にびっくりする。自分の全てを曝け出し全てを与える恋愛しかできない主人公の根底の考え方がけっこう個人的に共感を呼ぶ、しかしその根底からは想像がつかないほど純粋で歯止めが効かないキャラクターには流石に絶句するほどで全く共感できない矛盾も孕んでいる。
そんな彼女がたまたま出会った男と結婚、その男が仕事で出会った女性がストーリーに絡んだ途端異常なサスペンスに狂気乱舞してしまった。ちょっと変な感じに近寄ってきた農家娘がかつて愛したホストの妻だと知った時の恐怖感よ、"オールドボーイ"を想起するヤバい過去がまた襲ってくる感覚に脳がクラクラする感じを主人公と体験する。
なんとタイトルの"熱のあとに"がしっくりくるストーリーだろうか、忘れようとしていた過去が牙を向いて襲ってきたはずなのにその根源の愛が再燃してしまう純粋すぎる愛が生んだ悲劇をただ見つめるしかない。そして主人公の旦那を愛する同僚が出てきてからのまた混沌とした後半にも口あんぐりで放心状態になってしまうほど、全く想像がつかないラストまで突っ走る喧嘩会話劇でもあるし、ラストのサイドブレーキと見つめ合いが実は鑑賞者に委ねる見せ方でまた良い。愛情表現と愛し方に共感はするが行動に共感できない矛盾、そんな展開ありかと思う脚本にやられた怪作におったまげた。
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