ノラネコの呑んで観るシネマ

ビニールハウスのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ビニールハウス(2022年製作の映画)
3.5
目張りしたビニールハウスに住み、盲人の夫と認知症の妻の老夫婦の家政婦として働きながら、少年院にいる息子の出所を待つキム・ソヒョン。
だがある日事件が起こり、妻を死なせてしまう。
主人公は夫が盲目なことを利用して、妻の死を隠し通そうとする。
一つの過ちが際限なく広がってゆく、典型的な負のスパイラルの寓話。
しかし主人公のやってることは、いくらなんでも杜撰過ぎと言うか、二、三日ならともかく、一体なぜあれでOKと思うのか、あまりにも愚かに見える。
まあ理性的な考えが出来ないほど、追い詰められているのかも知れない。
だとしても、登場人物は貧困層のシングルマザーに認知症の老人に知的障害者と、社会的弱者ばかりを集めて、都合よく不幸が連鎖してゆく展開は、社会の不条理と言うより作者の見えざる手の方を感じさせてしまうのが問題だ。
やりたいことは分かるし力作だとは思うが、自然に入ってくるのではなく「ああ、こう観て欲しいのね」という恣意的な狙いを感じさせてしまうと、その瞬間に説得力が失われてしまう。
主人公の不倫設定も要らないし、最後は明らかにやり過ぎ。
やや消化不良だが、監督・脚本のイ・ソルヒは29歳の新人らしいので次に期待したい。