ぽん

アメリカン・フィクションのぽんのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.2
小学生のとき国語の授業で書いた詩が先生に褒められ、コンクールに出すことになった。出品する際に、先生が考えた一文を最終行に加筆させられ、それが私は大いに気にくわなかったが、結果的に入選した。審査員の評には「最後の一行が子どもらしくて良い」とあった。

もう一つ。当時エレクトーンを習っていて、オリジナル曲を作って演奏するというコンクールに出ることになった。先生に言われるがままソナチネを作らされ、第1楽章と第3楽章はなんとか自力で作曲したものの、第2楽章は先生が「こういうのはどう?」とチャラチャラッと弾くメロディをそのまま楽譜におこして完成させた。結果は地区予選落ちだったが、この時の審査員評には「第2楽章が子どもらしくのびのびしていた」と。
当時ガンバレルーヤはまだいなかったが、私の中のよしこが「ク〇がっ!」と叫んだのでした。

長々と自分語りしてしまったが、本作はそういう話なのだ。
売れない黒人作家がステレオタイプの黒人イメージ(貧困、犯罪、麻薬、銃、殺人)満載の小説を書いたら大ヒットするというコメディ。
私の経験は、大人が子どもを利用して喜ぶ、大人のための“子ども”の消費だった。
本作は、白人が黒人を利用して喜ぶ、白人のための“黒人”の消費だった。
まぁ自分の場合は「大人の欺瞞」で済むハナシだけど、本作は隠しきれないレイシズムの裏返しだったりするので、業の深さが違いますね。

ともあれ、会話の一つひとつが気が利いていて、かなり面白かったです。
メタフィクションの物語をさらにメタレベルのオチでしめて、最後に流れるのはマイルス・デイヴィスの「枯れ葉」。マイルスも裕福な家のボンでインテリ黒人ですね。
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