ぽん

ジュリアンのぽんのレビュー・感想・評価

ジュリアン(2017年製作の映画)
3.8
怖っ。最後はホラー。

離婚後のモラハラDV夫の恐怖をストレートに描いた物語でした。11歳の息子ジュリアンを演じた子役の子、この撮影のせいでメンタルやられちゃってない?って心配になった。あんな強面のオッサンに目の前で怒鳴られて拳ふり上げられたりしたら、大人だって怖いよ。アタシだったら泣く。この子もそういうシーンのとき、演技とは思えない怯えっぷりでハラハラと泣く様子が真に迫っていたのですよ。いわゆるエーンエーン的なやつじゃなくて。父親役の俳優さん、本気で嫌われちゃったんじゃないかってそれも心配になった。(^^;

ホントにただひたすらに「これがモラ夫だっ!」っていう映画なんですよね。一つひとつの描写が微に入り細を穿つって感じで、その解像度の高さを面白がる(と言ったら語弊があるけど)作品なんじゃないでしょうか。ハイパーリアル的な?

初っ端の裁判所のシーン、調停員がジュリアンの陳述書を読み上げると、父親はロクに聞きもしないで弁護士に話しかけている。もう最初っからこの男が、自分の息子の話に耳を傾けない奴だってことが描かれてる。自分のことで頭が一杯なんですよね、たぶん。

で、モラ夫の両親も出てくるのだけど、このモラ父がやっぱりモラ臭プンプンで。食後に奥さんに「コーヒー入れとけ」っていうその言い方でハイ、モラ確定ー!(モラモラうるさくてすいません)
事態が悪い方に悪い方に進んでっちゃったのは、この両親のせいもあるんじゃないの?って思ってしまいました。お母さんの軽はずみな情報漏洩と、お父さんの強硬姿勢。あんな風にモラ夫を追い詰めちゃいかんのです。被害者意識ばっかり募らせて、これ以上失うものなんかないってなったら無敵の人になっちゃうでしょーが。なに燃料ぶっこんでんだ。

オリジナルのタイトル「jusqu'à la garde」のla gardeは保護とか管理って意味らしいけど、jusqu'à la gardeというイディオムは「徹底的に」という意味になるようです。上手いタイトルだ。

モラ夫が元妻と子どもに執着するのは、愛情じゃなくて支配欲ですよね。日本でも共同親権が話題に上っているが、モラ夫は別に親としての義務を果たしたいとか養育に関わりたい訳じゃなくて、権利を奪われるのがイヤってだけでしょう。所有してた奴隷と愛玩動物が、勝手に自分の元から離れていくなんて許せん、って理屈かなと。あー恐ろしい。
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