いしはらしんすけ

アメリカン・フィクションのいしはらしんすけのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.9
第96回アカデミー脚色賞に輝いた、脚本家・コード・ジェファーソンの長編監督デビュー作。

現時点で邦訳が出てないらしい原作は勿論未読...なんで、肝心要の脚色の妙については触れられません、すみません。

ただ聞くところによると原作には作中内小説がまんま載ってる、とこのへんのメタ構造自体がラストの展開にトレースされているであろうことは想像に難くなく、原作者の実体験を基にした文壇内幕ものという二重三重のメタフィクションっぷりは、当然私的に「好きなやつ」。

どうも原作よりフィーチャー度が高いらしい中高年疎遠家族ドラマは身につまされ度が高いだけにこれまた刺さりはする...けどこっちに関してはドタバタベクトルに振ってくれた方が好みではあったかも。

実生活と表現欲の間で揺れるクリエイターの葛藤という議題は言っちゃえばありがちだが、そこにステレオタイプを巡るコンプラ/ポリコレ意識という課題を溶かし込んでいるあたりが、思索を刺激してきて面白い。

ここで連想したのは意外にも「不適切にもほどがある」だったりして、まだあっちは終わってないから間違ってたらごめんですが、表現や差別といったイシューに関してはこっちのが本質的な域まで踏み込んでる気がしました。

原書で読む根性ないので日本語訳版が出てら小説ならではの叙述ギミックを味わうべく一読してみたいと思わされた、俳優陣の確かな演技も堪能できる良作です。