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アメリカン・フィクションのぴーとのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.5
ひねくれた小説家の目線から見た黒人差別の形。

歴史的背景から黒人を見下し蔑むような差別…ではなく”黒人を差別するのはやめましょう”という昨今の過剰な差別擁護だったり、本の内容関係なく作者が黒人という分類で書店で本が並べられていたり…というそんな黒人をとりまく現状に真っ向からツバを吐きかける。

医者の家系で自身は作家で家政婦も雇っているといういわゆる裕福で賢いモンクの家庭は客観的に考えると恵まれているとも見えるけど実態は過去に自死した父親に認知症を患う母親と突然死する姉にゲイの弟と多くの問題を抱えていて…。

世間が抱くイメージに基づくものが求められ本当に自分がつくりたいと思うものが認められないというのはクリエイターなら誰しもが悩む問題だと思う。
そして「おまえらはこんなくだらないものが見たいんだろう!」と皮肉たっぷりに冗談で作っただけのはずのダメ親父、ラッパー、コカイン、警察沙汰という世間にウケるであろう黒人像を詰め込んだ小説が結局人気が出て賞賛されるというそれも含めて皮肉に皮肉を重ねたような状況。

もうこんなことやめてくれって憤りを通り越して奮闘するもことごとく裏目に出て嘆くモンクの姿がせつなくもかわいくてわらけてくる。
「F〇CK」なんていうそんな言葉を使っちゃいけませんと子供に教えるような小説のタイトルが並ぶ光景がこんな世界なんてクソくらえっていうメッセージのように思える。
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