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アメリカン・フィクションのhmzのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
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監督はとてもリアリストでシニカルな人なんだろうな。
私はこういう皮肉な映画、好きです。
ラストの展開の方法も良かった。

私はあらゆる差別はなくなればいいのにと願う人間であるのと同時に、それを訴える創作物の中には「ところで当事者たちはこういう(過激すぎたり、ただただ弱者として描かれていたりする)描かれ方を望んでるん?」と思ってしまうひねくれ者でもあります。
もちろん、悲劇の〇〇として扱われたい人はどこにでも一部はいるんでしょうけど、あまりにも過剰だと、それってエンタメとして消費してるだけでは?と感じてしまうことも。

"白人から黒人への偏見と、それに応じるような黒人から白人への偏見"
世界が少しずつフラットな方向へ向かおうとしていて、今後もだんだん凹凸がなくなって行くかもしれないけど、当然だけどまっさらになることなんてない。
消し去れない歴史だし、プライドでもある。
それらを何重にも皮肉りまくっていて、なんともいい言葉がみつからないけど、粋な感じ。
メインビジュアルや題名も含めて小粋。

日本人がわかりづらい題材ではあるし、不用意に踏み入ってはいけない領域でもある気がするけれど、何だって真に受けすぎるのはいけませんね。
だけど大衆は、センセーショナルでわかりやすい方にやっぱり流れてしまうのだということ。
わかりやすいものは理解しやすいし、理解しやすいものは楽だから、面白いと感じるようにできてしまってるんだよなあ。
文学を愛する主人公の気持ちを考えると切ない。
本物が失われてしまうことがありませんように。

「白人が求めてるのは真実ではなく免罪符だ」
というパワーワードと、
「今こそ黒人の声に耳を傾けるべきよ」
の説得力のなさ。

BGMがずっと静かなジャズなのも、新鮮で好みでした。
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