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異人たちのnaoのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.5
今年史上最も美しく壊滅的な物語。脚本は意外にもシンプルで小説の叙述性を不可避なものにするが、些細なカットに現れる主人公アダムの人格形成が興味深い。何より審美的な撮影とアダムを演じたアンドリュー•スコットの演技力に支えられた、原作の「異人たちとの夏」という”過去”とアンドリュー•ヘイという映画監督の”現在”が出会った傑作だった。ポール•メスカルは「ノーマル•ピープル」「アフターサン」でも認識されているように、どこかその存在感に影がある。だからこそ言葉では語らない、影のある存在感が生きた役だった。

違和感を感じるほど新しい高層マンションに孤独に住む主人公アダムが、亡くなった両親に再対面するという不可思議な現象と、メスカル演じる隣人ハリーとの交流を描いた、意外にもファンタジックなストーリー。一見主題にも思えるゲイの描写は、アダムやハリーの孤独感を強める要素以外の何ものでもなくて、またその孤独感の原因でもない。映画を再考するほどにスコットの演技は印象深く、またメスカルの意図的な演出も巧み。原題”All Of Us Strangers”に示されたメッセージが表出する、あまりにも残酷で壮大なエンディングは忘れ難い。
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