寺町今出川

異人たちの寺町今出川のネタバレレビュー・内容・結末

異人たち(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

大林版「異人たちの夏」は「お盆に起こったノスタルジックな牡丹燈籠」的なイメージの名作だったが、今回そのリメイクとなりストーリー的な展開はほぼ準じている…が主人公の性自認含む配役の変更が大きく、そこがこの映画の根底にある1番心揺さぶられる部分だと感じた、そして色んな改変はありながらも「何故異人たちの夏のリメイクなのか?」は物語のベースとして個人的には非常に納得できた。今回の主人公はノスタルジックな浅草の下町ではなく生家で両親と再会し「どうしても言いたかったありがとう」だけではなく「どうしても言えなかった辛い気持ち」を告白する為に30年以上の歳月を遡る。時代は80年代半ば…思えばカミングアウトが音楽の世界に開放と反発を生んだ時代。ペットショップボーイズやフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、等々が高らかにその讃歌を表現しながらも「Frankie Goes To Hospitalだろ?」と揶揄・迫害されエイズパニックが世界中で巻き起こり人権侵害があからさまにあった時代(今回の劇伴で重点的に使用されていたので当時を思い出した)そこに、その時代に10代だったと言う「異人たちの夏」の設定の必然を強く感じた。とにかく主人公含む登場人物4人全員が素晴らしく、特に主役のアンドリュー・スコットの強烈な疎外感と「ずっと1人だと思って生きてきた」孤独と絶望が強く胸に迫ったし、微妙な表情の変化にも感動させられた。映像表現も抜群。傑作ですね
「I’ll protect you from the hooded claw
Keep the vampires from your door 」
by F.G.T.H. 'Power Of Love'
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