ひでG

異人たちのひでGのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.0
GW。暑い日中の空気変わり、少し爽やかな風が吹く中、自宅からチャリで自宅近くのイオンシネマへ。
こーゆー生活て良いな、映画が近くにある日々って良いなあと思いながら劇場に向かいました。

冒頭の青く不透明な遠影の中、微かに輝く光。
ラストショットもこれと対を成している。一つの点は周りの闇が広がっていってもずっと光続けいる。この光こそ、本作のテーマなのかもしれないな。

原作は未読だが、1988年の大林宣彦監督の「異人たちとの夏」は好きな映画だった。もう少し前作について付け加えると、好きな場面がたくさんある映画と言い換えれた方がいいのかな。
本作のクライマックスにも出てくる3人での会食シーン。大林版は確か、すき焼きだったと記憶している。そこから別れの場面でのお父さん片岡鶴太郎や秋吉久美子のセリフには、号泣した。
そんな名場面で締めればよいのに、その後の名取裕子のエクソシストになっちゃって帳消し💦、大林さんの詰め込み過ぎの悪い癖が出てしまった映画でした。  

本作は、一応大林前作のリメイクになるのだが、テイストはかなり違うし、狙っているものもかなり違う気がした。

前作がファンタジーやノスタルジーというカテゴリーに入る、ウエットな場面が主(両親のあの家の感じ、あれだけで郷愁を誘う)なのに対して、同じ現実とはかけ離れている。そして、もっと主役のアダムにぐっと近付いている気がした。
ひょっとしてこれは彼の夢や妄想なのかなとさえ思った。
彼の孤独が作り出した世界なのかもしれない。

前作と大きく違うセクシャリティ。
両親との再会の2度目にして、早くも母親にカミングアウトをする。この場面での張り詰めた感じは上手いなあと思った。
愛する息子の将来。記憶のさらに先に確かに生きているけれど、それは自分の理解をさらに超えた世界だったこと。言葉を選びながら、ショックを抑えている母とそれを慮るアダムの会話がとても印象的だ。

アダムが言えずにいたこと、分かってほしかったことがずっと心の隅に残っているからこそ、父と母が出てきたのではないだろうか。

ここに出てくる人物や場面はアダムの後悔や不安が生み出したものなのだろうか。

いつも抱かれていたアダムが強く後ろからハリーを抱きしめる。人と人との関わりは大宇宙の微小な点でしかないのかもしれない。
でも、それを求めざる負えない存在なのだと思う。

静かな静かなさざなみのような時間。
(「さざなみ」もアンドリュー・ヘイ監督作品ですね。)
ラストの微かではあるが、輝くあの光点のように私の心を灯してくれた映画だった。
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