ぜにげば

エイリアン3のぜにげばのネタバレレビュー・内容・結末

エイリアン3(1992年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

 うーん…なんとも言えない。クレメンスが殺されるシーンとか、宿主に合わせた形のエイリアンが生まれるって設定はめちゃくちゃ好き。
 1体のエイリアンに悪戦苦闘する展開は1作目と同じようでいて、2作目を見てしまっているからエイリアンを特別な生命体と感じれなくて残念。ただのモンスターって感じ。
 いきなりニュートが死んだところから始まるのはショックではあるけど、リプリーは『進撃』のライナーだと思うと納得ができた。だからこそ最後死んで終わるのは意外だった。ただビショップのオリジナルに対して「NO」と言うのは痛快だったしリプリーらしいとも思う。お腹を突き破るクイーンを抱きしめながら死ぬのは、直前の「子供産めるよ」っていう囁きに対して本当は「YES」と答えたかったんだろうなとも取れるし、お腹の中のクイーンに愛情が湧いてるから不要とも取れる。いずれにしろ、子供を愛し続けたかったんだろうし、子供を愛した状態で死ねたのならリプリーは絶望ではなかったんだろうと思う。
 かなり危険な状況なのにかなり早い段階でセックスに誘ったりするのは意外だった。彼女の性欲は描かれて然るべきと思うけど、相手がその気になったらいつでも強姦殺人に合う危険性があるってことが全く無視されてるのは理解し難かった。肝が据わってるとも取れるけど、エイリアンのせいで平和ボケしてるだけに思えた。探り合いの中で「誘う」というカードを切ったってことなんだろうけど、うーん。これでレイプされて惨いことになる(ギリギリで助けられてもらわないと困るが)なら男のキモさを描けるし展開としても納得がいったけど、個人的に環境の割に平和すぎるのは違和感があった。初代や『羊たちの沈黙』にあった「男の気持ち悪さ」が、レイプ魔が沢山いる状況なのに全然なく、通過儀礼的に中盤で1回襲われるだけ。もっと男達が欲に負けてむちゃくちゃになると思ってたし、そうならないとおかしい環境と設定だと思う。散々「女をずっと見てない」「強姦の罪を犯した」と煽ってたのに。なんなら男に襲われるところをエイリアンに助けられるくらいの逆転があっても面白かったんじゃないかな。今回のエイリアンは男性の象徴でも女性の象徴でもなく犬だし。クレメンスが殺されるまでの駆け引きは凄く面白かっただけに、それ以降の団結する感じは更に平和で退屈だった。フュリオサくらいの過酷さが欲しかったところ。ディロンは大好き。
 全体的なCGの甘さが目立つ。最後のリプリーの身投げも「ジュッ!」となるのかと思って見てたら全然想像よりも深くて…と思ったらそのまま消えるし、エイリアンなんて昔のキングコングぐらい合成が甘い。アニマトロニクスなどの素早い動きが出来ないという欠点を補い、それ以外の全てを損なった改悪だった。それこそ初代は動き自体は少なくてもジャンプスケアの上手さでホラーとして完成されてたし、本当に残念。
 クレメンスが殺された後にリプリーだけ生き残るご都合主義感が強くて、その後にクイーンが寄生してるから狙われないって分かるのはいいんだけど、クイーンがお腹を突き破るまでどれくらいの時間を要するかの説明は全然なされてないし、描かれてないところで実は寄生されてましたなんて後付けみたいで納得感も乏しかった。お腹を突き破るクイーンを抱きしめるシーンが個人的にかなり好きだったからギリ許せてるけど、そうじゃなかったなら納得するのは無理。
 どうでもいいけど、スプリンクラーにカメラが寄る時のRPGでアイテム見つけたときみたいな音はなんだったんだ。まあ細かいことはいいか。初代には適わないし今のところ一番面白くなかった。ただ好みとしては『2』よりも上だったかも。

追記
自分が男性だから、無意識の内に男性贔屓してしまうことへの危機感が強い。だからなのか、男性にはクズであってほしいし、その上で酷い目にあってほしいと思ってしまう。『エイリアン』がそうさせる。
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