わたぼう

アタラント号のわたぼうのレビュー・感想・評価

アタラント号(1934年製作の映画)
5.0
ブルーレイで買ってたけど、劇場で観たいと思って見ずにいた今作。何度もタイミングを逃してたけど、ようやく観ることができた。

序盤設定がよく分かってなかったが、とにかく猫がかわいい、猫がかわいい、親父さんがキュートくらいにしか思ってなかった。でも年代を考えるといろいろとすごい映画…!

船長と結婚して、船の中で生活して、猫がたくさんいて、全身入れ墨の変なおじさんが一人レスリング芸を見せたり、部屋にはナイスなガラクタが集まってたり、パリの行商人はちんどん屋スタイルで愛を囁くし、水に潜ったら好きな人を見れるし、指でレコードは鳴り響く、とハチャメチャ。これでもかと魅せるアイデアが盛りだくさん。

にも関わらず、ちゃんと現代にも通ずる恋愛映画になっているし、映画史上最も美しいラブシーン(だっけ?)は確かに印象的。くるくる変わるアングルが天才的だし、顔に謎の点々影も謎に官能的。(婦人の帽子についてる網のレースかなと思った)

ラストもドローン撮影かといわんばかりの海ゆく船の空撮技術。

こんな映画が1934年にあった。というのが奇跡。1950年代のヌーヴェルヴァーグの面影さえ先取りしている。

上映後の須藤健太郎さんのトーク(聞き手:坂本安美さん)も聞き応え抜群で面白かった。80分と映画と同じくらい喋っててお腹減りすぎだったけど…。

今作は公開当時ヒットしなくて、音楽を全て当時の流行歌にして、フィルムも切ったり貼ったり再編集して作り直して、タイトルも変えて(はしけ船の恋?とか)公開してた時期があったらしい。でもゴーモン社が後に元に戻そうとして、現在のバージョンに至ってるが、その過程でいろんなバージョンがあったらしい。親父さんがお腹の入れ墨タバコを吸うシーンのあるバージョンを観てみたい。
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