2時間かけて見せつけられる哀しさと理不尽さによるストレスで、気がついたら剥げかけていたネイルをむしり取ってしまっていた。
大丈夫、これはフィクションだ。
現実がこんなに地獄でたまるかよ。
保身と嘘。
理不尽と暴力。
借金と自殺。
この世の嫌なもの全部あった。
彩人/壮平という兄弟が終始対比になって物語は進んでいくが、正直彩人のことを思うとそんなことどうでもよくなる。
誰でもいい。
彩人を救ってやってくれ。
彩人は何のために生きたんだろう。
壮平は何のために闘ったんだろう。
合間合間にある″あの演出″は、邦画らしくいわゆる″あえて意味やその背景を描かない演出″となっていたけれど、一体どんな意味があるのか。
鑑賞後、べっとりと余韻がこびりつくような作品だった。
今でこそふっくらとして健康的で穏やかな雰囲気のいっそん(この人は磯村勇斗をこう呼んでいます)だけれど、彩人を演じるいっそんは痩せこけた頬に無精髭と、幸せのしの字も感じない極限的な風貌だった。
昨年、いっそんがエランドール賞を受賞した『月』を観たときも思ったけれど、この人はどこまで自身を追い込んでこの役を演じたのだろう。