このレビューはネタバレを含みます
ずっとそこにあった。意識しなければ私には見えていない。
それが何であるかを知り、関わることで初めて世界に現れて意味が生まれる。
知るということは私と切り離すこと、関わり合いの中で自分の輪郭も確かめる。
彼女は、苔は小さな森と言った。
言われなければ気付けない岩や木のかさぶたのような緑に小宇宙が広がっている。
「覚えている、私の色は緑。」
私という存在が無数の意味によって成り立つ小宇宙であるということ。
関わることは私の肌触りを確かめる存在証明には留まらない。私は物質としての私をひとっ飛びに、苔生すように広がっていく小さな宇宙なのだ。